朱色の炎と黒い煙を噴き上げて、装甲車が爆発した。一両、また一両と。ゲートを守る守備隊のものだ。それをハンス達が乗る4両の戦車が七面鳥でも撃つように片っ端から吹き飛ばしているのだ。役人達は10数両の装甲車と数十名の歩兵を4両の戦車を正面から左右にかけて半ば囲むように配置して迎え撃ったのだが、何ら成果を上げられないまま今一方的に敗北していた。地面にはばらばらになった役人の腕や足、脳漿を溢れさせたり内蔵を吐き出した死体やがいくつも転がっている。戦車に乗っていない鈴華や国仁達大多数の者は遙か後ろの安全な位置から見守っていた。

 しかし、戦局は間もなく膠着した。役人達は残らずゲートに閉じ籠もり、巨大な門扉の両脇にある人員や車輌の出入り口も閉ざしてしまったのだ。そして何箇所かに設けられた銃眼からの機銃掃射が始まった。

「ゲートを撃て!」

 ハンスが叫び、雨霰と降り注ぐ銃弾をものともせず、4両の戦車が砲身を一斉にその白い建物に向けて撃ち始めた。白いコンクリートの巨大な塊が轟音と煙に包まれ、地面が震える。しかし、いくら撃っても微かに罅が入るか表面が少し剥がれ落ちる程度で、ダメージと呼べるものを与えられるとは言い難い。

 その時、アルドが自らの戦車の銃塔を銃眼に向け、次々に沈黙させた。

「向かって一番左の銃眼を狙って。そこから入れば何とかなると思うわ」

 ハンス達の戦車に後方の鈴華からの声が届く。

「どうして左なんだ」

「図面見てなかったでしょ、そっちに武器庫があるのよ。それに、例のメイって娘が空けた穴もね。正面から撃ってる間にその穴から国仁が入るから」

「そしたら武器が手に入るでしょ」

 国仁が続けた。

「よしきた!」

 ハンスの巨大な戦車から大小の砲弾が次々に放たれ、再び建物を激しく揺すぶると、集中砲火を浴びた銃眼はついに周囲のコンクリートもろとも吹き飛ばされ、大穴が空いた。

「何正面が?」

「ここは見張りだけにして正面だ」

「馬鹿言うな、相手は戦車だぞ」

「武器庫にバズーカと迫撃砲があるでしょ、物陰から狙えば何とかなるわ」

 メイが空けた穴を固めていた役人達が次々に奥へと引っ込む。

 その時、どこからか声がした。

「おじゃましますよ〜」

 役人達が穴の外を見ると、そこには両肩に手榴弾を下げ、銃を手にしてマントをつけ、宙に浮いている国仁がいた。

「てめえ!」

 色めき立つ役人達。

「あげよう」

 そう言って国仁が手榴弾を投げ込んだ。慌てる間もなく役人達の体が粉々に吹き飛ぶ。

「さーてと、一仕事終わらせますか」

 国仁が中へと入るや止めどない銃声が響き、そして間もなく、ゲートの向かって左側にある出入り口が開かれてハンス達の前に国仁が姿を現した。

ハンスや後方の仲間達が囃し立てる。

 

「ハロルド、エンベル急いで!」

 二人が書類を書いているところへもう一人の役人が血相を変えて飛び込んできた。

「武器庫とられちゃったのよ、市内にも他のゲートにも援軍は頼んだけど、この調子じゃその前に駄目かもよ」

「丈八は!?」

「さっき官舎出たらしいけど、まだ着いてない」

「よしこれでできた、行くぞ!」

「ああ」

 二人が前線へと急ぐ。

 

「それじゃ頑張って!」

「任せといて!そっちもしっかりね」

 アルド達の乗る小型の戦車を含めた二両の戦車が奪い取った武器を持つ何人もの仲間を乗せて中心街の官庁を制圧すべく都心へと向かった。

ゲートは銃眼が完全に沈黙し、鈴華達は皆建物の壁際まで辿り着いていた。

「意外と脆かったな」

「俺達ゃ道楽でやってんだ、仕事でやってる連中に負けるわきゃねえやな」

 幾人かが声高らかに談笑しながらハンスの砲撃で空いた穴から中へと足を踏み入れた時、中から異様な声が響いたかと思うと彼らを一瞬で輪切りにしてしまった。切り口も鮮やかに切り刻まれた胴体や手足がごろごろと転がる。

「てめえら、とんでもないことしてくれたなあ」

 例の二人の役人が姿を見せた。

 一同が驚いて足を止める。

 一人が足元を転がってきた仲間の首を見つけて走り寄ったその時、彼のこめかみが右から左へと貫かれた。ずぷりと苦無が彼の頭から引き抜かれ、とくとくと鮮血が迸る。

 苦無の持ち主がざわめく鈴華の仲間達に向かって再び構えた。

「下がれ、任せろ」

 ハンスが戦車の中からスピーカーで叫んだ。

「だったら俺がやる」

 ハンスの隣の戦車が砂煙を上げて二人に向かう。

 砲口が唸り、熱い鉄の塊を吐き出す。しかし例の奇妙な叫びと共に砲弾が、そして戦車が輪切りになり、中から人間の輪切りがぞろりと零れた。

「だ〜から無駄なんだって、へへへ」

 ハロルドが口に手をかざしたまま薄ら笑いを浮かべてゆっくりと近づいてくる。

「....一度下がって!!」

 鈴華は苦渋の決断を下した。

「ちっ!」

 ハンスもただ一両残った戦車に仲間を乗せて逃げ出す。

「おいおい逃げるなよ、もう一稼ぎしたいんだから」

「不謹慎だぞ」

「お堅いねえ」

「戻って、中が大変なのよ、一人入って来てんのよ!」

「それじゃ外はどうすんだ」

「丈八が来た!」

「しょうがねえ、行くか」

 二人は再び奥へと呼び戻されて姿を消した。

 

「国仁は大丈夫なんだろうな!!」

 ハンスは歯ぎしりしながら、しかし徒歩の仲間達の盾となってゲートから離れざるを得なかった。

 今度は制圧されていない右の出入り口からは再び役人達が何両かの装甲車と共に蟻のように出てきて銃弾の雨を浴びせ始める。

 戦車の影からも、幾人かが撃ち返す。ハンスも砲撃を再開した。銃弾が飛び交い、砂煙が這う。

 戦車の脇にいた青年が喉を撃ち抜かれて倒れた。

「テリー!エリックをお願い!」

 鈴華はそう言うと、ハンスの戦車の前に躍り出る。

 自らの服をかなぐり捨てる鈴華。

 その下に着けているのは、赤青緑といったとりどりの石をちりばめた銀色の首飾りや腕輪、足輪、そして紐同然の僅かな布地。曲芸でも始めるようないでたちだ。そして両手に持つのは一組ずつの鉄の箸。

 その彼女を銃弾の嵐が襲う。

「はぁああああ!」

 すると鈴華は目にも止まらない速さで箸を繰り出し、踊るように一つ、また一つと弾を摘んでは投げ捨てていく。周囲には見る見る弾の山ができていた。

 その時、ゲートの巨大な鉄扉が轟音と共に吹き飛んだ。そして鈴華達の頭上を越えて、遠くの住宅地へと落ち、いくつかの建物を押し潰したようだ。

 鈴華達が、そして役人達も動きを止めて一斉にゲートの奥の空間を注視する中、そこから現れたのは、髪を逆立て、髭をぼうぼうに伸ばした巨人だった。

 丈八だ。丈八という名は生まれながらのものではない。彼の身の丈が一丈八尺あったことからいつしか付いた名だ。そして今彼は10メートルを超えている。

 しかし、その姿は右半身だけだった。切り口も露わに服もろとも縦に真っ二つにされた右半身。それが右腕で扉を殴り飛ばしたのだ。

 地響きを立てながら一本足で飛び跳ねて進む大男の右半身。

 役人達がそれを見て一斉に拍手を送った。

 その後ろからは左半身も飛び跳ねて続く。異様な光景だ。

「凝った仕掛けでごまかそうったって無駄だぞ!」

 言うが早いかハンスが彼の戦車の大小の火砲をぶっ放した。

152ミリ、75ミリそれぞれの砲弾が丈八の右半身の顔面をとらえ、橙色の炎を噴いて炸裂する。しかし丈八の半身は煩わしそうに手で煙を払いのけただけで、その向こうから現れた顔は傷一つついていない。

「切り口だ、ハンス!」

 戦車の中から叫びが聞こえる。

「お、おう、あんた頭いいな」

 ハンスの戦車が再び火を噴く。

 砲弾が断面めがけて次々に襲いかかる。それでも丈八はせいぜいくすぐったがるだけだ。

「...知ってる?2丁目の角んとこにケーキ屋さんできたんだよ」

「あー知ってる〜!今日帰りに寄ってみようと思ってたんだー」

「でも閉まる前に仕事終わるかな」

「早く済ませちゃおうよ」

 遠くから青空に声が響いていた。若い、少女と言えるかも知れない女性達のとりとめもない会話。

 声のする方に一塊りの砂煙が見えた。

 それは、一隻の陸上艦だ。

 全長150メートル程、前甲板に11インチ砲の4連装砲塔を一基積み、中央部には艦橋がそそり立ち、その両脇のケースメートは一門ずつの15インチ砲を前に向けている。船体の前半部はホバークラフト、後半はキャタピラで推進され、鈴華達に向かってゆっくりと進んで来た。

「あれが、出てくるなんて...」

 鈴華がそれっきり言葉を失った。この陸上艦はかつてザイラの市民を守るために造られたものだ。それが自分達に向かっているのだ。

「ねー艦長!威嚇なんてまどろっこしいことやめてさ、当たるように撃っちゃおうよ!」

「いーでしょ、ねっねっ」

 艦橋の中では艦長と思しき中年の男性を乗員である若い女性が囲んでいる。

「駄目です、一応何斉射かは威嚇しないと」

「1度?2度?」

「艦長〜!残業とかやだよぉ」

「解りました!!威嚇は2度!あっスピーカー入ってるよ!」

「あちゃーじゃあ今のみーんなあいつらに聞こえちゃったんだー」

「聞こえて困ること喋ってないじゃん」

「発砲準備完了!撃っちゃえ!撃っちゃえ!」

「味方には当てないで下さいよ」

「はーい、せーの、発射〜!!」

 轟音が轟き、船体を黒煙に包んで6門の巨砲が一斉に火を噴いた。

 鈴華達の周囲に火柱が上がった。

 直撃こそなかったが幾人かがぽっかりと空いた眼窩から目をぶら下げて倒れた。

「あいつら!好き勝手やりやがって!」

「なんて連中だ見方もいるんだろ!」

 ハンス達の怒号が虚しく響く。

 

 煙が晴れると、彼女らの目の前には丈八のそれぞれの半身が突っ立っているのが見えた。

「下がって!もっと!」

 鈴華が叫ぶ。

 その時、丈八の二つの半身は切り口同士くっつき、右手でずれを直し、継ぎ目を指で押して消していく。継ぎ目が見えなくなると、左手で抱えていた巨大な瓶に入った赤い液体をやにわに飲み始めた。口元からいくらかが流れ落ち、鉄の臭いが漂う。血だ。丈八の土気色だった肌が見る見る赤みを帯び、瓶が空になると同時に頭の先までが均一に血の気を帯びた。

「ぐふうふぅふぅふふふふおおおおおおお!!!」

 耳や鼻から湯気を噴きながら手足をばたつかせて暴れる丈八。

「丈八だけに手当稼がれちゃたまんないわよね」

「余所の奴らにいいとこかっさらわれるのも面白くねえや」

 ゲートから出てきていた役人達も丈八をよけて左右に散開し、再び銃撃を始めた。

 銃撃の雨をどうにか遮っていた鈴華の箸がついに折れ、後ろの仲間達がばたばたと倒れる。

「あのうすらでかいのから蹴散らしてやる!」

 ハンスが戦車で丈八へと突っ込んで行く。

 丈八は足元に迫る戦車の砲塔を蹴飛ばし、ハンスは砲塔とバスケットもろとも鈴華達の後ろまで飛ばされた。残った車体はそのまま振り下ろした丈八の足に踏み潰され、乗っていた仲間達もろともボール紙のように平たくなった。

 そして鈴華達を囲んで上がる火柱。陸上艦の2度目の威嚇だ。1発が丈八の頭を直撃するが、無論効果はない。しかし鈴華達の仲間が幾人か粉微塵になり、音と衝撃と煙で銃撃を妨げられたゲートの役人達が陸上艦に向かって文句をぶちまける。

「ぬおおおおおお〜こんの野郎〜!!てめえみたいな奴に負けてたまるかああああ!!」

 地面に転がって炎上する砲塔をはね除け、一人の大男が吠えながら丈八めがけてまっしぐらに突っ込んで行く。ハンスだ。

 そのころ、ゲートの中ではだだっ広い空隙の中で独り国仁が縦横に飛び回りながら銃を撃ちまくっていた。

「後から誰も来ないなあ。外もかなりまずいことになってんのかな」

 見上げて撃ち返す役人達を草でも刈るように次々に蹴散らす彼だが、手榴弾はもう全て投げてしまい、弾も残り少ない。

「派手にやったな、覚悟しろ!あばばばばばばばばばば!!!!」

 いきなり飛び込んできたハロルドの口から広がる波紋が国仁を襲う。辛うじて身をかわすが銃がずたずたに寸断された。

「あっら〜大変だあ」

 慌てて天井へと逃げる国仁。ハロルドの横からふっと消えたエンベルが国仁のすぐ横の宙へと姿を現し、国仁の背に回し蹴りを見舞う。

「わああああああああ!!」

 国仁がバランスを失って落ちて行く。

「あばばばばばばばばばばばばばばばば!!!!!!」

 身をかわす国仁。しかし間に合わず、彼の右脚が膝から切り落とされて輪切りになった。床に落ちた国仁の周りに今の一撃で一緒に切られた周囲の機材がどさどさと国仁の周りや上へと降り注ぐ。

「ぐっ....!ふあ....ぐっ!!」

 国仁が破片や埃にまみれた床をのたうっている。

「大したもんだな、よけやがった。とどめは譲るよ、これで貸し借りなしだぜ。手当は外の連中で稼ぐさ。丈八には少し遠慮してもらう」

「解った」

 エンベルが苦無を手に国仁に近づく。

 一方、中心街へと向かっていたアルド達は、半ばも行かない内にその歩みを止めた。

「はぁ〜ぃ、無駄な抵抗ご苦労様」

 彼らの前に立つのは十代半ばの一人の少女だ。腰に届くさらりとした長い髪をなびかせた端整な顔立ちの彼女が、全身から真っ赤な光を放っている。

 彼女もアルド達に差し向けられた役人だ。彼女の仲間達は数十両の戦車に分乗して鈴華達の方へと向かっていた。

「何馬鹿なこと言ってんの、通るわよ!」

「タブヤン!様子を見てから」

 アルドが止めるのも聞かず、彼の前にいた戦車が少女へと向かって行く。その砲口が吠え、砲弾が少女を射る。その時、少女を包む光が赤から黄色、白、そして青へと変わり、熱気が当たりを包んだ。砲弾は一瞬にして溶け、アルド達をまばゆい光が襲う。

彼が再び目を開いたとき見たものは、真っ赤な流動体と化してその形を見る見る崩してゆく戦車、そして肉を焼かれ骨まで白い灰になってゆく仲間達だった。

「タブヤン!」

「これで後一台になったわね」

「僕達は逃げるわけにはいかないんだ!」

 アルドはハッチを閉じると銃を撃ちまくった。しかし全ての弾は彼女に届く前に雫となって地面に散るばかりだ。

 

「こっちからも来た!」

 誰かが叫んだ。

 追い立てられて後退を続ける鈴華達の右手に姿を見せたのは、数十両の戦車−例の少女の仲間達だ。

「止まって止まって!何か面白いことやってるわよ」

「ほんとだ、こりゃ滅多に見らんないね」

 三方から囲む役人達は、今しばらく何もせずに見守っている。

 それは二つの巨体のぶつかり合いだ。ハンスの二メートルを超える頑丈な体から繰り出される重い一撃が一発、また一発と丈八の体を連打した。

 一方的に殴られていた丈八が鼻から湯気を噴いてハンスを殴りつける。

 両腕を構えて防ぐハンス。しかしその体は大きく飛ばされ、地面に一直線に溝を掘りながら埋まった。ハンスはそれがどうしたとばかりにすぐさま溝から走り出て再び幾発もの拳を叩き込む。

 再び丈八の拳がハンスをぶっ飛ばす。またハンスの体が一〇メートルばかり飛ばされて地面に数メートルの溝を穿つ。

「それがどうしたあ!ぬおおおおおおおお!」

 再度ハンスが丈八を殴る。再び丈八が殴り返す。埋まるハンス。

 これが幾度か繰り返され、そして今、決着がつこうとしていた。

「ま、まらまら、しょううわ、おわっひゃいねえろお〜」

 最早溝に半ば埋まったまま、浜に打ち上げられた昆布のようによれよれになったハンスが無傷の丈八にぼこぼこと殴られている。

「おっ、おめえのぱんひはよ、腰がへえってねえもんらからかすりもしねえんら、」

 ぐしゃぐしゃに折れた両腕をぶらぶらさせているハンスから咳き込みながら吐き出される血の泡に混じって、時折そんな声が聞こえる。

「ハンス....!」

 鈴華ががっくりと膝をつく。

「鈴華、まだ後ろはふさがれてない、逃げよう!」

「犠牲が多すぎる!今はもう駄目だ」

五〇人近くいた仲間は二〇人ほどに減っていた。無傷の者は一〇人もいなかった。

「こんな筈がないのに....」

唇を噛む鈴華。

「必ず、何とかなるはずなのに....!」

 

「あらあら、ずいぶん緊迫した展開ね」

ガラスの鈴のように澄んだ少女の声に一同が振り向いた時、そこにはファイがいた。

「みんなどうしたの?」

ファイが怪訝そうに、それでいて屈託なくいつもの微笑みと共に鈴華に問いかける。

「御免なさい....オムライス、作れないかも」

遮るようにファイが言った。

「それなんだけど、早く作ってもらおうと思って、あなた達の用事、少し私達で引き受けに来たの」

「えっ!?」

「悪いわね、勝手に決めちゃって」

「あ、あの...」

「あんた、何言ってるんだこんな状況で」

 ファイの頭を疑うような声が言った。

 

「きゃーうすらでかいそこの人かっこいー」

陸上艦からのスピーカーだ。

「後はあたしたちに任せてよね。艦長!もう当てちゃっていいわよね〜」

「いい、いいよもう、好きにして。書類作るのはまた私なんだから...。手当は全員山分けでいいですね」

「は〜い」

「待ちなさい!都心からわざわざ出てきたのよ、手ぶらじゃ帰れないわ」

 反対側の戦車の群れからも声がする。

「余所の奴らに後れをとるな!」

 ゲートの役人も負けじとがなり、三方から大小無数の凶器が鈴華達を睨む。

「ファイ!逃げて」

「どうして?きっと撃てないわよ」

「お先に失礼!」

真っ先に火を噴いたのは陸上艦だ。ずんと低い音が轟き、巨大な砲身が震える。

「あ〜てめえらずるい....?.....何だ?」

砲弾は爆発した。しかし、それは砲口を出たばかりのところでだ。

「今のは取り消すわ。きっと撃っても当たらないのよ」

 ファイが微笑んだ。

 きょとんとしている鈴華達。それは役人達も同じだ。

「もう一度発射〜!」

 再び巨弾を打ち出す陸上艦。今度の爆発は砲身の先端だ。竹筒のように裂ける砲身。

「ファイ、一歩左へ」

 その声に応じてファイが身をかわす。

 ファイの遙か後方に現れたのは二人の少女。魅紅とメイだ。魅紅が構えた長い銃身の先から白煙が棚引いている。彼女が陸上艦から放たれた砲弾を射抜いていたのだ。

 魅紅は少し銃身を下げると陸上艦の船体に狙いを定めた。

「メイ、貴方は右。そのまま真っ直ぐ」

「オムライスと関係あるの?」

「ええ、きっと早く食べられるわよ」

 振り向いたファイが手を振ってメイに呼び掛ける。

「そうなんだ〜」

 そう言うとメイは口を開き、陣取る戦車隊めがけてどっと息を吐いた。

 凄まじい暴風が戦車を襲い、一瞬の後、それらは消えていた。地面は扇形に削り取られ、彼方の城壁や建物も、ここまで戦禍は及ぶまいと思っていた人々もろともことごとく消え失せている。

 メイがへなへなとへたり込んで倒れ伏し、見ると早くも寝息を立てていた。

「艦長!どうしよう」

「主砲副砲破損...こりゃあ大変なことですよ、怪力線用意!」

 陸上艦の艦橋の前にあるパラボラアンテナは、レーダーのものではなく、指向性エネルギー兵器だ。

「怪力線エネルギーチャージ完了!」

「照準よし、照射!」

 青白い稲妻のような光が迸る。

 魅紅が再び銃身を僅かに上に向け、その光の奔流めがけて銃を撃つ。鈍い金属音と共に銃口から火花が散り、オレンジ色の光の矢が一直線に飛ぶ。それは青い光の流れを水しぶきのように周囲にまき散らしながら、パラボラを、そして艦橋の付け根を貫いた。

 叫びが響き、艦橋が吹き飛ぶ。人形のように端正な顔立ちの眉一つ動かさず、再び銃身を戻して引き金を引く魅紅。再び光の矢が飛び、ファイの左をかすめて船体を舳先から艦尾まで貫き通すと、艦尾を抜けた辺りで炸裂する。そして陸上艦は大音響と共に爆発四散した。焦げたかけらがいくつか鈴華の手前まで飛んできて地面に刺さっている。

「お、おい、一斉射撃だ、もう残ってるのは俺達だけだ」

 はっと我に返ったゲートの役人達が一斉に銃を撃つ。渇いた銃声が続けざまに響いたが、何事も起こらなかった。

 「神行太保、只今参上!ってね」

 渦巻く砂塵の中、得意満面で役人達の前に立ちはだかっているのは依緒奈だ。手には青い光と凄まじくを放つステッキ状のロッドを構え、銃弾に追いついて全て叩き落としたのだ。銃弾は熱を帯びた雫となって地面に爆ぜていた。

 たじろぐ役人達。

「き、き、貴様等の行いはただの犯罪とはわけが違うんだぞ、我々は法を司って」

「つかさもセンパイも少年もあるか〜!!」

 依緒奈は地面を蹴ると風のように姿を消した。瞬きする間もなく役人達も装甲車も、バターのようにずたずたに叩き斬られていく。乱切りにされた機械や人体のパーツが燃えるオイルや焼けた臓物を吐き出して転がる。自分の身に起こったことが解らない役人達は腹から弾けた腸をかき集めたり、枕のように手足をなくして仰向けになったまま目を白黒させていた。矢継ぎ早に容赦なく襲うソニックブームが、彼らを宙へと舞上げ、とどめを刺した。

「中は任せて!すぐ片付けてくる」

 再び速度を落として姿を見せた依緒奈は軽く言ってのけると、半死半生のハンスを未だ一心に殴り続けている丈八に声を掛ける。

「そのくらいにしときなよ、もうすぐ君の相手が来んだから」

 そして彼女はゲートの中へと消えた。

「......圧倒的じゃない」

 鈴華達は突然の状況に呆気にとられるばかりだった。

 

「何か言っておきたいことがあるかしら?正義は寛大なものよ、そのくらいは聞いてあげるし、きちんと弔ってもあげるわよ」

 光を放つ少女が事務的な微笑みと共にアルド達に言いながら一歩、また一歩と近づく。

「正義!?そんな馬鹿なこと...!」

「馬鹿はあなた達だわ、正義の力を思い知りなさい!」

 少女の姿が陽炎に揺らぐと光が再び色を変え、温度が見る見る上がる。

 押し潰すような熱気がアルド達を包む。

「アルドもう駄目だ!」

「諦めないで!」

 

「♪愛する.....を残.....う旅は....」

 どこからか流れる歌声。そして共に一陣の風が吹き、アルド達の周囲の熱気が冷めてゆく。

「何よ!何なのよ!」

 むっとして叫ぶ少女が辺りを見る。

「♪行くあてもなく、風の吹くまま、流される〜だ〜ぁけ〜夢に命を賭けながら〜今日まで来たけえれぇえどぉ〜心に虚しい風の音〜、さすらいの唄〜」

 かき鳴らされるバラライカの音色に乗って響くのは艶っぽい少女の歌だ。

「♪あなたが〜恋しい〜あなたが恋ぃ〜しい〜あなたが〜恋い〜しい〜あなたが恋〜しぃ〜い〜」

 声の主はアルドの背後の建物のてっぺんにいた。

「詩織!」

 アルドが声をあげた。

「はぁい。あ、今のはDVD化記念よ」

 ウインクで答えたのは詩織だ。彼女が少しだけ帽子を真上寄りにかぶって周囲を冷やしていたのだ。

「あなたも一緒に灰にしてあげるわ!」

「うふふ、火遊びが過ぎるわね火事気違いさん」

 詩織は悪戯っぽい微笑みと共に建物から跳ぶと、空中で何度も回転してアルドの側に降り立った。

「正義は我にありよ!覚悟なさい」

「そんなものどこにだってあるもんですか、いいこと可愛い子ちゃん、あたしから離れちゃ駄目よ」

 アルドと戦車の仲間達を寄り添わせると、詩織は帽子を真っ直ぐにかぶり直した。

 少女を包む光が見る見る鈍くなり、周囲の建物が霜に覆われる。辺りにダイヤモンドダストが散った。建物にいた人々はとっくに逃げ出した後だったが、しかし建物は急激に冷やされてひび割れ傾き、がらがらと崩れ出した。

「負けるはずがないわ!」

 少女がその体から再び青い光を放つ。しかし詩織の凍気がそれを掻き消し、彼女の体はガラス細工のように凍てついて、それもつかの間、白銀の破片となって飛び散った。

 霜に覆われた一面の瓦礫の中心には、詩織とアルド達、そして凍って砕けた一両の戦車が残っているだけだった。

「ばっかばかしい、これは君の力よ。正義の力なんかじゃないわ」

 そう呟くと詩織はアルドに向き直った。

「もういいでしょ?」

 詩織がアルドに唇を押しつける。

「お、おいあんた、今は困るよ!アルド、しっかりしてくれえ!」

 構わずアルドを押し倒す詩織。

「ま、まだ、やることがあるんだってば」

 顔を反らせたアルドが慌てて叫ぶ。

「焦らせるわね....じゃあつき合うわよ」

 アルド達は詩織を加えて再び都心へと向かった。

 

「何度やっても嫌なもんだな」

 そう言ってエンベルが苦無を国仁めがけて振り下ろす。

 その一瞬、彼の苦無は弾き飛ばされて天井に突き刺さる。同時に役人の乱切りがいくつも床にぶちまけられて肉が焼ける臭いが立ちこめた。刺さった苦無は半分ばかり欠けて赤く溶けている。依緒奈だ。

「だらしないなあもお。死なないでよ!」

 国仁とエンベルの間に割って入るとロッドを構える。ロッドが低い唸りを上げて青白く光り、時折稲妻のような煌めきが走る。

 

 とんぼを切って後ろへ跳び退くエンベル。

「おい、邪魔すると同罪だぞ」

 ハロルドが近づく。

「そりゃあ自分の子供ほどの相手じゃ嫌だけどな」

「ふふふ、一ついいこと教えてあげよっか。数に頼る奴はいくら群れたって何も出来やしないんだって。それともう一つ、間違ったことする役人は、役人じゃないんだよ、その前に、人間でもないってこと」

 依緒奈が不敵な笑みを浮かべた。

 エンベルは腰からもう一本の苦無を取り出して冷ややかに言う

「間違ってるかどうか、それを決めるのが法だ。法が変わらないうちは、誰がどう言おうとその法に従う、それが法を守る者の務めだ」

「やっぱり話ができるほど頭良くないね。人間なのは見た目だけじゃん」

 そう言うと依緒奈はロッドを構えたままスイッチを切る。光が鈍り、それは単なるロッドに戻った。

「役人に考える頭は要らない。法の下僕は馬鹿でいい、いや、馬鹿でなければつとまらない、私はそう思っている」

 その声は力強かった。

「ああ、そうなんだ、法だの権力だのに寄っかからないと立ってられない弱虫なんだ、可っ哀想〜」

 依緒奈の表情が、露骨な軽蔑を表して笑い崩れた。

 そして、二人の姿は消えた。時折エンベルの姿が現れ、また消える。目ほどの高さで幾度か火花が散る。

 再び二人が姿を現したとき、喉を破られたエンベルが、千切れた頸動脈から散水器のように血を噴いてどさりと床に崩れた。

「さ〜てと、君はどうする気?」

 依緒奈が手出しをしなかったハロルドを見る。

「俺は、こいつが言うようなことは難しくて解らないんだ、ただ、ただ俺はな、俺と、家族で生活していかなきゃならないんだ、それだけなんだよ!」

 誇らしげにそう言う彼は例の叫びを発した。音の輪が依緒奈へと集まる。

 依緒奈はそれを次々にかいくぐってゆく。彼女の小さな体が一瞬の間にハロルドの前へと迫ると、ロッドをハロルドの顔面へと叩きつける。眦が裂けて耳が千切れた。左脳をぶちまけながらハロルドが壁へと吹っ飛ぶ。

「....今日の、手当で、払えるつもりだったんだけどな....ごめん、家のローン、残っちま...」

 そこまで言った彼の体はもう動かなかった。

「あ〜あ、こいつもやっぱり馬鹿だった...そうだ国仁!国仁!!起きろ!!!」

 駆け寄った依緒奈が耳元で呼ぶ。

「.....あ、やあ、また、会ったね...どのくらいぶりかな....」

 彼の顔からはすっかり血の気が引いている。

「こうなったのは........僕のせいなんだ......壁をなくしたいって、ずっと...思ってた.......でも、でもね.....もし......壁がなくなったら.........どうなっちゃうのかなって.........何を支えにして....生きていけばいいのかなって、どこかで、そう思ってた、その.....報いなんだ.....これは....」

「馬鹿!今更そんな事言うな!魅紅、すぐ来て!早く!!」

 依緒奈がポケットにしまっていた腕時計のような器械で世界の頭脳を呼んだ。

 

「駄目駄目駄目駄目やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて!!!!!!!」

 ハンスにとどめを刺そうとする丈八めがけて、耕すように地面を掘り返し、濛々たる砂塵の尾を引いてなすびが走ってきた。気付いた丈八がなすびの方へと向き直り、巨大な拳を握りしめて構えると渾身の力を込めて殴りかかる。なすびも勢いに押されて足を止めるが負けずに左の拳を思い切り突き出した。

 二つの拳が激しくぶつかり合い、ぐしゃりという音が響いた。血と肉と骨の飛沫と化してなすびの周りに丈八が降る。目の前では、彼の足だけがひたすら地面に踏ん張っていた。

「ふう....びっくり、した....あ...ごめんね、ハンス」

「い、いいほほ、もっていひやあっはあ....ははは....」

 ハンスが生きているのを確認したなすびがほっとした笑みを浮かべ、ハンスもそれに笑顔で答える。

「終わった、のね....ふふふ....あははははは....」

 鈴華が辺りを見回してやっと笑顔を取り戻した。

 生き残った仲間達が笑顔を弾けさせ、どっと歓声が上がる。

「あなた達は勝利の女神だったのかも知れないわ!」

 歓喜のざわめきの中、ファイは彼女の手を掴んで小躍りする鈴華や仲間達を見てきょとんとしていた。

「そうだ、都心はどうなったのかしら!」

「あ〜可哀想」

 ゲートのかつての門では、止血と足の回収を済ませた魅紅と共に、忘れられている国仁を背負って出てきた依緒奈が呆れていた。

 大急ぎで官庁街へ向かった鈴華と数人の仲間達が見たものは、半径約一マイルに及ぶ、元は官庁や議事堂、議員や役人、そしてたまたま居合わせただけの人々だった氷の瓦礫だ。

「何これ...」

「例のあの娘さ。アルドなら、あの、なんだ、中で一緒にいるよ」

 体を震わせ、白い息を吐いて歯をがちがちと鳴らしながら、言いにくそうに彼の仲間達が迎える。

 やっと氷の表面を雫が伝う程度まで気温が戻りつつある、かつて議事堂だった場所の壇上。そこでは湯気に包まれ、汗にまみれた二つの裸身が今重なり合って激しく蠢いていた。それは一糸まとわぬ姿で絡み合う詩織とアルドだ。そしてその熱い肉塊は、その一方−アルドが昏絶して横たわるのと共に、再び二つに離れた。

「初めてだったのね、少し早いけど、可愛かったわよ」

 詩織は絶句する鈴華達などどうでもいい風で、傍らに崩れ落ちて寝息を立てているアルドの頭を撫でる。

 陽の光がオレンジ色を帯びる頃、プテラスピスでは勝利の宴が開かれていた。出発前に比べれば随分と人数が減っていたし、大半の者はどこかしら負傷していたが、一様に高揚していて、飲み食いしながら騒ぎ、歌い、踊っていた。

 

「ねえ、こここれでいい?もっと後で言った方がいいかしら」

「いいじゃんいいじゃん、どっちだっていいじゃん!」

 新政権の首班という副業ができてしまった自身と仲間達のために、鈴華は表に押し寄せている報道陣向けのスピーチを紡ぎ出そうと、嬉々としながら頭を抱えている。

「♪遠い〜世界に〜旅に〜出ようか〜」

 宴の輪の中でバラライカを手に歌っているのは詩織だ。その隣では寄り添うようにしてアルドも、そして周りの者達も続いて歌っている。

 外では、壁の実質的な消滅という一大イベントを大勢の市民が祝って車のクラクションを鳴らし、花火を打ち上げては騒いでいる。

「いい気なもんだね、さっきまで興味もなかったくせに」

 依緒奈は自分が少数派という高見にいる栄光にご満悦な様子でクラッカーをぱくついていた。

「実のところ半信半疑だったんだ、あんなに速いなんて思わなかった」

「普通だよ、あのくらい」

 時折与えられる賞賛に得意気に答える依緒奈。

 ファイは窓辺で街の喧噪を眺めながらシャンパングラスを傾けた。

「幸せそうね、何かいいことがあったのね」

「ほんとに幸せな連中だよ」

 依緒奈が彼女なりに調子を合わせる。

 メイはファイの横でひたすら眠っている。今日は長く起きてい過ぎたようだ。

 そしてドアのベルががらんがらんと鳴り、店に魅紅が入ってきた。店の脇にテントを立てて負傷者の治療に当たっていたのだ。後に続くのは全身包帯でぐるぐる巻きながら元気なハンスと、まだ杖をつき、跋を引いているが両足とも揃っている国仁だ。

 それを見た店内の一同が拍手と指笛で歓迎した。

「どんな具合?」

 なすびが魅紅に心配そうに尋ねる。

「重傷者108名のうちここにいる者の同志12名、役人32名、計44名の治療を完了した。後の64名は心停止に起因する、或いは直接的な脳の損傷が原因で死亡した。最終的な犠牲者は我々の攻撃を受けた者全員を含む800名余りと思われる」

 相変わらず機械のように淡々と告げる魅紅。

「あんたは天才だぜ、俺達の仲間は20人ほどしか死ななかったんだからな」

 そう言ってハンスが笑った。

「でもさ、そんなに死んだんだよ」

 なすびが顔を曇らせる。

「ああ、残念だなあ、ま、しょうがねえしょうがねえ、わはははははは!!」

「え、あの、だから...」

「そうだ、明日、やりたい奴みんなで素手で壁を叩き壊すんだ。テレビも取材に来てアジア中に放送されるらしいぞ。俺も出るしさ、あんたも出てくれよ、な、」

「あたし、そういうの、駄目だよ...」

 苦笑しながらなすびが拒む。

「ほんとにみんな幸せそうね、きっといいことがあったのね」

 今度は店の中を見回して言うファイ。

「今はね」

 いつしか輪を抜けてきた詩織がファイの傍らに立っていた。

「あのさ、」

 いくらか静かな口調で国仁が依緒奈に向き直った。

「何、あらたまって」

「今になって、ううん、今になったからだろうね、余計に不安なんだよ、壁がなくなって、どうやって生きていこうかって。とりあえずどうしたらいいのか、ってね」

「そんなこと考えなくても生きていけるって!生まれたときにどう生きるかなんて悩まなかったでしょ」

「それは、そうだけど」

「詩織、歌ってよ!」

「今行くわ」

 アルドが呼ぶのに答えて、再び歌の輪に戻っていく詩織。

「♪若い〜力を〜体に〜感じて〜みんなで〜歩こう〜長い〜道だが〜力の〜限り〜歩いて〜ゆこう〜明日の〜世界を〜探しにゆこう〜」

 大きく伸びをして、ファイが言った。

「次は、どこへ行こうかしら」

「それにさ、今やることはあるじゃない」

 依緒奈がそう言って、からかうように国仁の肩を叩く。

「えっ、何を?」

「そうよ忘れたの?あんなに大事なことなのに」

 ファイが国仁の方へと眩しい程の笑顔を向ける。

 国仁も笑顔を返す。

「あ、あはははは、そうだった、そうだったよ、....本当に大事なこと、忘れてた。.....オムライス、ご馳走するよ。とびっきりのをね!」

 その時、メイが閉じていた瞳を嬉しそうに見開いて、輝かせた。

−終−